当たり前のこと

大阪の谷町4丁目にあるホテルで
気持ち良くワインを飲みながら
仕事をしていた

気づいたらワインボトルは空いていて
近くのセブンイレブンにワインを買いに出た

すると夜道に
泣きはらした目をしたおばあさんがいて

僕に気づくとすがりつくように
助けてください、と言った

私、三重から出てきたんですけど
財布をなくしてしまって
梅田からここまで歩いてきました
東大阪まで歩いて帰りたいんですけど
行き方を教えてください

僕の左手を両手でぎゅっとにぎり
彼女は泣きながら僕に頼んだ

わかりました、と僕は答え、
YAHOOで東大阪までの行き方を調べた

谷町4丁目から東大阪までは500円以内で行けることが分かった
僕の財布には小銭が600円あったが、
紙がなかったのでセブンイレブンまで行き、
紙とペンをもらい、
東大阪までの電車での行き方を記載し、彼女に600円と一緒に渡した。

本当にありがとうございます

彼女は言った

いえ、そんなことはないです

と僕は言った

彼女と別れてから僕はセブンイレブンに戻りワインを買った。
ホテルに帰るまでの間、良いことをした、と思ってしまう自分の気持ちに
罪悪感を感じた

良いことではない、当たり前のことなのだ

まだまだだな、と思った